2020/2/5

刺繍で起業を考える皆様へ3(全3回)

最終回  今後求められる刺繍ビジネスのカタチとは

※『第1回 刺繍のビジネスモデルを再考する』→こちら
※『第2回得意分野を作ることが成功の早道です』→こちら


第1回であらためて刺繍ビジネスについて考察し、第2回では得意分野を作ることが成功への早道だと述べました。
最終回の第3回はこれから求められる刺繍ビジネスについて考えてみたいと思います。

ハンドメイドから刺繍加工に

近年、個人でも商品の売買が簡単にできるようになりました。ハンドメイドの作品も様々なところで売られていますね。
こうした作家さんの中には人気が出て事業として作品を販売している方がいます。ハンドメイドでは生産が追いつかなくなり、業者さんに外注する方もおられます。
しかし、納期対応には苦慮されているようです。そこで自前設備を持ちたいと考え、実際に刺繍機を購入された方もいます。
このような事例は過去にはありませんでした。まさしく情報化時代だからこそ生まれてきた新しい形のビジネスモデルではないでしょうか。

店舗に刺繍ミシンがあるのは当たり前?

あるお店に入ると、『刺繍サービスやってます』などの案内が書かれているのを見たことがないでしょうか。
私たちのようなディーラーがコンパクト刺繍機(単頭機)呼んでいる刺しゅうミシンは街中のあらゆるところで見ることができるようになりました。
刺繍に限らず、店舗でのパーソナライズ(カスタマイズ)は時間さえ許されるのであればお客様に喜ばれるサービスですし、並べられている商品に少しアレンジを施すことでお店とお客様が一緒にものづくりをするという一体感が得られます。
商品に新しい価値を与えて顧客満足度を高めるサービスを【付加価値サービス】と言いますが、刺しゅうミシンはまさにこの付加価値を商品に与える機器のひとつであると言えます。
刺しゅうミシン以外にも、プリンターやレーザー加工機などを店舗内に常設するようなブランドも登場しています。こうした付加価値サービスはこれからも無くなる事はないと考えられます。

社会の変化が刺繍ビジネスを進化させる!

刺繍工場や店舗、ネットショップなどあらゆる場所で刺繍機が活躍する時代になりました。そうなってくるといくら刺繍が付加価値サービスだとはいえ、競争原理が働いて今までと全く同じやり方では難しくなることも考えなければなりません。
特に価値を付与するサービスは基本的に人の力を必要とすることも少なくないと思われます。刺繍サービスはまさしく『人の力を必要とするサービス』です。
人手不足や働き方改革などによって社会の変化に合わせて、人の力を必要とするサービスのあり方も再検討する時期に差し掛かっています。
例えば、店舗でやっていた付加価値サービスを一箇所の物流センターに集約してそこから配送することで、サービスの質を落とすことなく店舗運営を合理化することも考えられます。
ネットショップでは注文ごとに人が作成している刺繍データを自動化できるシステムを自分のサイトに組み込む(DG.net)ことで人に頼らないデータ作成に切り替えていくお店も増えてくるのではないでしょうか。
刺繍の作業では、最も基本的でありながら最も難しい糸のテンション調整(糸調子)なども自動的に調整するタイプの刺繍機(i-TM搭載機、単頭機だとTMEZ)に変えていくことで人の負担を減らす設備投資が必要になることも考えなければなりません。
このように、社会の変化と技術の進化によって刺繍のビジネスモデルも進化していく必要があります。そして私たちもそれらに適応していかなければなりません。

刺繍ビジネス=人の力を必要とするビジネス

全3回にわたって刺繍で起業したい方向けに色々書き綴ってみました。
刺繍ビジネスといっても様々な形態があり、それも時代や社会情勢、技術の進化によって変わってくるということを長々説明してきました。
刺繍ビジネスのビジネスモデルの基本は付加価値ビジネスです。従って、本業の付加価値を上げるために刺繍機を導入される場合がほとんどです。
失敗リスクに関しては本業の売り上げアップに寄与することを考慮すると刺繍ビジネス単体での失敗リスクは低いと考えています。
むしろ刺繍機と刺繍データ作成ソフトを導入に至るまでに考えておく必要のある部分は『誰が刺繍データを作成し、刺繍機を動かすのか』です。
自分がやるのか、他の人がやるのかで初動は大きく異なります。また、他の人がやる場合は既存の従業員がやるのか、新しく人を雇ってやるのかなど、複雑な要因をはっきりさせておく必要があります。特に留意していただきたいのは刺繍データの作成です(刺繍データの作成に関しては本記事のテーマから外れますのでまた別の機会に記事にします。)
刺繍ビジネスは基本的に手間をかけて行うものだという認識がないと、求めている成果をあげる事は難しいことはご理解して頂ければと思います。




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